アメリカ人エンジニアの採用ガイド
ここでは、アメリカ人をエンジニアとして採用する際の注意点などについて紹介しています。
【地理・文化・政治・宗教観】アメリカってどんな国?
アメリカは50の州および連邦区で構成された大国で、人口は3億人以上、国土の広さでも世界ベスト3にランクインします。
中国やヨーロッパ諸国に比べ、歴史は非常に浅く、18世紀にようやく国としてのかたちを成しました。開拓民の多くはヨーロッパの囚人であったという記録が残っていますが、彼らが広大な国土でさまざまな可能性を発見し、産業を興したことで、アメリカは次第に大国へと成長していきます。20世紀に入るとGDPは世界一になり、その地位は現在まで不動。こうした『フロンティア・スピリッツ』はアメリカ人の誇りとして、現代の若者にまで受け継がれてきました。
またアメリカはエンタメ大国でもあり、ハリウッド映画作品やポップミュージックのスターたちは、世界的な知名度を誇ります。
【国民性】アメリカ人エンジニアの特徴は?
まずアメリカ人の母国語は、グローバル言語である英語です。他の言語のネイティヴスピーカーよりも意思疎通を図りやすいという点は、大きなメリットです。
また日本とは異なり、アメリカではエンジニアと言う職種に、明確な採用基準を設けています。「大学でコンピューター工学を学び、修了している」という資格を持たない人はエンジニアを名乗れないため、人材の基礎は非常にしっかりとしています。
さらにコミュニケーション能力が高いのも、アメリカ人の魅力。移民の国に生まれ、異なる人種間の交流や衝突を日常的に経験していますので、環境への順応力は高めなのです。
こうした背景は、彼らの自己主張の強さにも表れます。人種のるつぼで、自分をしっかり表現する必要に迫られてきたからです。また『アメリカン・ドリーム』に象徴されるように、未開の分野へ果敢に挑み、新境地を開拓することを美徳と捉えます。チャレンジ精神は非常に旺盛と言えるでしょう。
その分、アメリカ人の愛国心は非常に堅固です。中には「アメリカが世界の中心」と信じている人もおり、発言や行動には注意が必要です。
【新卒・転職】アメリカ人エンジニアの就活・採用事情
アメリカでは日本のように、新卒者の一括採用システムがありません。その代わり求人/採用は年間を通して行われていますので、各自の希望や事情に合わせ、就職活動を開始していくことになります。
アメリカが採用の際に重視するのは、学歴。エンジニアの場合はハーバード大学を筆頭に、マサチューセッツ工科大学やカーネギー大学、そしてスタンフォード大学やカリフォルニア大学でコンピューター工学などを修めた者へ、注目が集まります。また単に卒業したというだけでなく、博士号や修士号を取得している人材は、さらに優遇されます。
また日本のように『新卒者=業務経験のない素人』とみなされることはなく、修学内容に応じ、即戦力としての役割が与えられます。
アメリカ人は数年ごとに転職することも多く、終身雇用制度はなじみの薄い制度です。自分自身のスキルと商品価値を高め、目標に応じたステップアップを図っていくことを何よりも重要視しており「企業のために働く」という意識は希薄な傾向にあります。
【仕事観】アメリカ人エンジニアが就職先を選ぶ際に重視するポイント
アメリカは、エンジニアが働く場所として最高の部類に入り、専門職として正当な扱いが受けられます。それなのになぜわざわざ、遠い日本まで来て働くのでしょうか?
まず日本で働く多くのアメリカ人は、親日家であることが多いようです。日本の文化に興味を持ち、母国で日本語を学習したうえで、本格的に生活を送ってみたいという希望を、あらかじめ抱いているのです。
また「インフラが整っているうえに、治安が良い」という日本の環境も、好条件として魅力的に映るのでしょう。「将来母国に帰って、エンジニアとしての技術を活かしながら、日本文化を伝えていきたい」という目標を持つ人も多いようです。
つまり日本での就労を希望するアメリカ人エンジニアは、あらかじめ自国と比べて日本の待遇が優れているわけではないことを、理解しています。
そのうえで彼らが重視するのは『自身のキャリアプランとの合致』です。習得したい技術を学べる会社であれば、応募を積極的に検討するでしょう。
なお『年功序列』に代表されるような、日本式の窮屈な就労環境は、アメリカ人の性に合いません。アメリカ人は「自分の意見をはっきりと言える、自由な社風が実現できているかどうか」を、シビアにチェックしています。
【どうやって出会う?】アメリカ人エンジニアを採用する方法は?
外国人エンジニアの中でも、特にアメリカ人を採用したいという場合、どうすべきなのでしょうか?以下に見ていきましょう。
1.人材派遣会社の利用
日本人にとってアメリカは『遠くて近い国』。日本国内で働くアメリカ人の数もかなり多く、人材派遣会社もその扱いに慣れています。中には欧米人の派遣を専門に行う人材会社もありますので、積極的に利用を検討してみると良いでしょう。
首都圏のハローワークから、アメリカ人材の紹介を受けることも可能です。
2.自社スタッフからの紹介
すでにアメリカ人エンジニアを雇用しているという場合は、横の繋がりから採用を検討するのも一案。先述の通り、アメリカ人エンジニアは大学でコンピュータ工学を修めていることが多く、受けてきた教育の確かさはそれなりに保証されています。採用の工程や費用を削減するうえでもメリットもあるので、あたりを付けてみると良いでしょう。
ただし「どのようなプロジェクトの業務に必要な人材で、どのようなキャリアアップが考えられるのか」は、明確にしておく必要があります。
【注意点】アメリカ人エンジニアを採用する際に意識すること
コミュニケーション能力が高く、自分の意見をはっきりと述べるアメリカ人は、大人しい日本人スタッフにとって、よい刺激となってくれます。また縦社会のルールを重要視しないため、後輩にあたるスタッフにも、分け隔てない態度で接します。
その反面、上司だからといって必要以上には敬意を払わない人もいるので、管理は慎重に。日本人の美徳や日本での働き方というものを理解してもらうよう努力することは悪くありませんが、古い体質を押し付けるのはNGです。
社内のグローバル化を図りたいのであれば、非合理的な業務体制を引きずらないよう、意識改革する努力が必要です。
例えばアメリカ人は、自分が行うべき作業を終えたら、すぐに帰宅します。サービス残業や付き合い残業といった習慣には馴染まないので、強制はやめること。早期離職の原因ともなりかねません。
こうしたアメリカ人の就業姿勢と、ヨーロッパ/中国人エンジニアの就業姿勢との間には、多くの共通点があります。いずれも合理的で、仕事とプライベートの線引きが明確なのです。彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる職場環境を整えていくことで、外国人採用は軌道に乗りやすくなるでしょう。
アメリカ人エンジニアの採用まとめ
世界にその名を轟かす『シリコンバレー』は、IT業界の中心です。その強い影響下にあるアメリカ人エンジニアの存在は、日本企業の中で大いに役立ってくれるはず。
日本人の中には、アメリカに憧れ持つ人が多いため、社内で多少目立つ行動を取ったとしても「これが海外のやり方か」と、好意的に受け止めてくれる可能性は高くなっています。「彼らの存在をどのようにコントロールしていくか」。管理者の手腕が問われることになるでしょう。