日本にいる外国人エンジニアを採用する場合のフローとは?
終身雇用制度が崩壊しつつある日本の労働者にとって、転職は当たり前の時代。日本人と同様に国内に在留する外国人の転職も、充分に可能となっています。即戦力となってくれそうな人材ではありますが、雇用については外国人ならではの手続きを踏む必要もあるため、理解を進めておく必要がありそうです。
日本に住む外国人の採用方法
日本にいる外国人の採用は、以下のような方法があります。 海外に住む外国人と比べると、日本語が堪能な外国人も多いうえ、 ビザ申請や受け入れ準備を行う必要がなく気軽に始めることができますが、 日本人と同様に採用競争は加速しています。さらにエンジニア採用に絞るとなると、 より一層その母数は少ないことが予想されます。希望の人材との出会いの機会を広げるためには、 海外に住む外国人に目を向けてみることも一つの手段として検討してみてもよいでしょう。
1.人材紹介会社からの紹介
近年では外国人を専門とする人材紹介会社が増加しており、海外の日系企業または 国内での就労経験がある登録者や留学生の登録者をかかえています。 日本人を扱う人材紹介会社と同様に、会社ごとに強い業界や登録している人材の職種に違いがあるので、エンジニアであればIT人材に強い会社を選ぶことがおすすめです。
2.留学生を対象とした新卒採用イベント
平成30年5月1日現在の留学生数は約29万人(前年比 約3万人(12%)増)、2020年には30万人を超えると予想されています。 そうした留学生のうち日本で就職を望む学生へ向けて、日系企業を紹介するイベントが実施されています。 イベントに参加するためには、日本人の新卒採用イベントと同様に、留学生と企業との間に立ちコーディネイトを行う企業に依頼をしましょう。
3.求人媒体への掲載
外国人求職者向けの専門サイトに求人を掲載します。 応募を待たなければいけないので、人材紹介や採用イベントよりも母集団形成に時間がかかる懸念があります。 より多くの応募を集めるには条件面(給与や福利厚生など)だけでなく、仕事内容や、会社の雰囲気など 求職者が知りたい情報をしっかりと書き、自社で働くメリットを伝えることが大切です。
日本国内にいる外国人を採用する場合のフロー
すでに日本での就労経験があり、長期滞在している外国人を、新たにエンジニアとして採用する場合には、以下の流れを踏襲していきます。
1.在留資格の確認
まず在留資格の期限を確認します。期限切れの場合は不法滞在者ということになり、雇用した会社にも不利益が生じますので、当然雇用することはできません。なお在留資格の申請には、1~3ヶ月程度の時間がかかります。もし資格の期限切れが3ヶ月前後に迫っている場合は、至急の更新手続きが必要となってくるでしょう。
また採用を検討している外国人の前職が、エンジニアと異なる職種の場合は、在留資格変更の必要が生じます。この資格は「外国人の活動予定と在留のための条件が適合している」ことが前提となっているためです。
ただし、エンジニアという職業にはある程度の教育や実務経験が必要であり、個人の経歴が在留資格交付の根拠ともなっています。例えばそれまで飲食業に従事していた外国人を、いきなりエンジニアとして雇用することは、現実的に困難。いくら実力があっても、就労資格が現職と合致していない人物を雇用していると、企業側が『不法就労助長罪』に問われる可能性があると、理解しておかなくてはなりません。
いずれにせよ、資格の再交付には数ヶ月単位の時間が必要になると、あらかじめ理解しておきましょう。
2.就労資格証明書交付
すでに日本での就労経験がある外国人の雇用は『転職』があてはまります。
エンジニア→エンジニアという転職の場合、在留資格の再申請は不要に思えますが「前社の経営状況などを審査したうえで発行された資格である」という点には、注意が必要。場合によっては「転職後の在留は認められない」と判断され、不法就労に問われる可能性もあります。
こうした事態を防ぐため、転職の際は外国人本人が、新たに『就労資格証明書』の交付を申請します。こちらがスムーズに交付されれば、問題に発展することはありません。
3.採用準備
海外では、ビジネスの取り決めの場で契約書を締結するのが、一般的です。日本にはまだ、採用の際に雇用契約書を作成しない企業も多く存在していますが、外国人を相手に万が一トラブルが発生した際、契約書なしでは係争で不利な状況に立たされます。必ず作成するようにしましょう。
雇用契約書作成の際は、労働条件などをできるだけ詳細に記すことで、問題の収束に役立てられます。また日本語だけでなく、被採用者の母国語に対応する努力を怠らないことで、将来のトラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。
そのほか「社内業務を円滑に進められるような教育の機会や、質の良い生活が送れる環境を整備しておく」ことも、大切になってきます。
日本国内で転職活動中の外国人エンジニアを採用する際の確認ポイント
本ページの上部でもすでに触れましたが、外国人の場合、いくらエンジニアとして即戦力の実力があったとしても、在留資格との適合が確認できなければ、雇用できない可能性があります。
面談などの感触で「スムーズに話が進められない事情がありそうだ」と感じられた場合には「在留資格が許可されなかった場合は、どうしますか」という話を、あらかじめ切り出しておきましょう。もし採用まで話が進んでしまったという段階でも、雇用契約書に「在留資格が許可されなかった場合、内定は取り消す」という一文を加えておけば、予期せぬトラブルの回避に役立ってくれます。
また職務経歴書の中に、就労していない期間が多く見られた場合には、きちんと実態を確認しておくこと。生活のために不法就労を行った外国人を雇用すると、会社に不利益が生じる可能性があります。
そのほか「日本語能力はどの程度か」、「日本人の働き方や、会社の雰囲気に馴染める人材か」、「本国で暮らす家族との関係や家庭事情」などについても、確認しておくと良いでしょう。
外国人エンジニアを派遣社員・契約社員として採用する場合は?
外国人をエンジニアとして採用する際、派遣や契約社員という雇用形態を適応させることは可能なのでしょうか?答えは、可能です。
ただし正社員と同じく、職務内容が在留資格と適合していることが前提。派遣や契約先が変わるごとに『在留資格証明書』を再交付するのが、最もスムーズな方法と言えます。
ただし派遣という雇用形態の場合には、外国人エンジニアと派遣先の間に、派遣元が存在しています。入国管理局などとのやり取りを行う責任があるのは、派遣元のほう。企業としての業績が良くないと、外国人の派遣そのものが認められないというケースもあります。
また派遣先も「外国人スタッフに関する煩雑な手続きはすべて、派遣元に任せておけばよい」というわけではありません。会社の業績などについて、入国管理局から細かく確認されるようなことはないものの「外国人の労働力だから」と賃金を安く設定することはできませんし、在留資格に適合しない職務を押し付けていることが判明すれば、法律違反として罰せられます。これは、当の本人の希望に沿うかたちであっても違法とみなされますので、注意が必要です。
外国人留学生を新卒採用したい場合の注意点
留学生として日本で学習を続けてきた学生(大学生、専門学校生)が、卒業にあたって日本の企業に就職する場合は『新卒採用』ということになりますので、専門的な準備が必要となってきます。とは言え、その要点は非常に明快。それまでの在留資格が『留学』から『就労』への変更となるのです。その申請は留学生本人が行いますが、審査に1ヶ月以上の時間がかかるため、卒業前の12月~1月ごろから受付が始まっているそうです。
なお交付の際は、卒業証書の原本提示が求められます。もし何らかの理由で「卒業ができない」という事態が起きると、新しい在留資格証明書を受け取ることもできなくなってしまいます。
また在留資格証明書は「これまでの学習内容と就職先の業務内容が合致している」ことが、交付の条件となります。エンジニアに必要な『『技術人文知識国際業務』の在留資格が交付されるのは、職務内容に適した教育を受けてきた外国人留学生に対してのみ。採用側も内定を出す前に、その点を基本事項として徹底確認するようにして下さい。
まとめ
本ページの内容を見ていると「外国人の場合、いくらエンジニアとしての実力があっても、それだけでは採用できない」という事情が見えてきます。
「不当な扱いを受ける」、「劣悪な労働条件で働かされる」ことを防ぐ意味では非常に有効ですが、「可能性で内定を勝ち取る」、「未経験でも意欲を買われる」といったビジネスチャンスを、外国人は掴みにくいようです。
とは言え、国の定めたルールは、遵守しなくてはなりません。企業は現状を踏まえたうえで、最適な人物を採用する心構えを養っていきましょう。