日本にいる外国人エンジニアを採用する場合のフローとは?
ひとつの会社に入ったらさいごまでその会社で仕事をし続ける終身雇用を前提としていた、かつての “日本式の働き方” も、いまはすでに過去のものとなりつつあります。人々の価値観や働き方への意識が変化しているのみならず、政府も雇用の流動化によって企業の生産性を高め、経済成長につなげる方針でさまざまな施策を打つようになりました。いわば、転職は当たり前の時代。国内に在留する外国人の転職も、日本人と同様に大いに考え得る状況です。
即戦力となってくれそうな人材ではありますが、雇用については外国人ならではの手続きを踏む必要もあるため、理解を進めておく必要がありそうです。
日本に住む外国人の採用方法
すでに日本に在住している外国人は、海外に住む外国人と比べると、日本語での会話コミュニケーションに慣れているうえ、 入国のためのビザ(査証)の申請や、日本での生活/就労のための受け入れ準備を行う必要もなく、比較的スムーズに採用ができるというメリットがあります。
但し、 本当に優秀な人材を採るためには、日本人の採用と同様に採用競争が加速していることは忘れてはなりません。希望の人材との出会いの機会を広げるためには、 日本国内在住の外国人と並行して、海外に住む外国人に目を向けてみることも一つの手段として検討してみてもよいでしょう。
日本にいる外国人を採用するには、下記のような方法があります。
1.人材紹介会社に依頼する:
エンジニア人材を採用する上で、人材紹介会社への相談は有効な方法です。特に外国籍のITエンジニアを採用したい場合は、外国人エンジニア専門の人材紹介会社に相談することがおすすめです。そういった会社は、外国人ITエンジニアの数が多く、彼らが働き場所として求める環境や企業のニーズを理解しています。また専門のスタッフが、自社が求めるエンジニア人材を紹介してくれるため、時間や手間を省くことができます。
ただし、外国籍ITエンジニア特化型の人材紹介会社を利用する場合は、採用費用についても注意が必要です。通常、採用費用は採用する外国人エンジニアの年収の30%~35%に相当します。一方、人材がうまく定着できなかった際の返金規定も存在し、1ヶ月以内での退職の場合は80%、3ヶ月以内での退職の場合は50%が返金、などと取り決められることが一般的です。
さらに、外国人エンジニア専門の人材紹介会社は、採用にあたっての在留資格申請や各種サポートも行っている場合があります。そのため、採用プロセス全体を一括してサポートしてもらえるという点で大きなメリットが期待できます。ただし、このようなサービスを利用する際の手数料や費用についても事前に確認しておくことは大事です。
以上のように、エンジニア人材を採用するうえで、人材紹介会社を活用することはとても有効です。また、正社員としての採用にこだわらない場合は、人材派遣会社に相談をして、有用な人材の派遣を依頼するという手段もあります。
2. 求人広告や求人媒体を利用する:
オーソドックスな方法ではありますが、求人媒体へ掲載をしたり、あるいはネット上へ求人広告を出したりすることは、人材確保のために有効です。
求人媒体への掲載では、外国人求職者向けの専門サイトへ求人情報を掲載します。ただし、それを見た人材が応募してくるのを待つ必要があるため、人材紹介や採用イベントと比べて、母集団形成に時間がかかることは覚悟しておく必要があります。少しでも早期に成果をあげるためには、「求職者が知りたい情報」を充実させることが重要です。給与や福利厚生といった条件はもちろん、当人が担当することになる具体的な業務内容、さらには職場の雰囲気や会社の文化的側面など、魅力的な要素を明確に伝えることが大切です。
求人広告を利用する際にも、外国人向けの求人広告を積極的に掲載します。インターネット上の求人サイトや、外国人コミュニティ向けのウェブサイトを活用し、アピールポイントや職場の魅力を訴求する広告を展開します。
いずれの場合も、自社の魅力や働くメリットを的確に伝え、求職者に「この会社の、この業務なら、自分のキャリア形成や成長が見込めるな」という思いや「働く環境や文化が自分に合うように思えるな」と感じさせることが重要です。
そのため、求人広告の作成においては、目を引く表現や具体的な事例、社員の声を活用し、エンジニア人材が自社に興味を持つきっかけを提供することが有効です。
3. オンラインプラットフォームやSNSを活用する:
単に求人情報を掲載するだけの求人サイトではなく、「日本で働きたい外国人求職者」と「そうした求職者を採用したい企業」をマッチングさせるオンラインプラットフォームも増えてきています。求職者は企業の目に留まるように自らの職歴やプロフィールを登録し、一方、企業側は求める人材の目に留まるように工夫した求人情報を掲載して、それぞれがお互いの情報を目にすることができるというものです。
ただ閲覧できるだけでなく、条件の合う両者を引き合わせる機能やスカウト機能などを備えたプラットフォームもあり、「Daijob.com」や「Yaaay」などは、そのなかでもよく知られているものです。外国人求職者へは英語で情報を伝えるプラットフォームがより効果的です。
そのほとんどは、求職人材は無料で登録ができ、求人をする企業側が料金を支払う仕組みとなっています。企業が求人情報を掲載する時点で料金が発生するものや、情報掲載は無料で、人材が採用に至った時点で成功報酬的に料金を支払うサイトもあるので、そうした料金体系を比較検討して活用するのがよいでしょう。
また、SNSを使って候補者を探し、直接コンタクトを取る手法も、一般化してきています。企業がLinkedIn、Facebook、X(Twitter)などのSNS上に自社アカウントを設けたうえで、そこに集うユーザーのプロフィールを見ながら、ポテンシャルの高い人材とダイレクトに交流していく、という手法です。
とくにLinkedInはビジネスに特化したSNSで、履歴書のように学歴や職歴、スキルなどを登録できる仕様となっています。転職を目的としてあえてLinkedInにアカウントを設け、企業からアプローチされることを期待している人材も決して少なくありません。全世界200以上の国と地域で9.3億人以上のユーザー(2023年時点)を抱える、まさに地球規模サービスとなっており、仕事探しのためにLinkedInを使うユーザーは毎週数千万人もいて、毎分のように採用が成立しているというデータもあります。
LinkedInを転職のために使いこなしている外国人エンジニアは決して少なくありません。FacebookやXも併せて活用していくことで、外国人ITエンジニアとの接触機会は格段に広げていける可能性があります。
4. 留学生を対象とした新卒採用イベントで接触:
日本国内で教育機関に属して勉強をしている留学生の数は近年大きく増加する傾向にあります。2019(平成31年)の時点で31万人。その後、2020年、2021年にはコロナ禍における政府の入国制限の影響を受けて減少をしたものの、2022(令和4)年5月1日現在では約23万人となっています(※)。
※情報出典:JASSO 独立行政法人日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査」(2022(令和4)年度 他)、
内閣官房教育未来創造会議 「日本における外国人留学生数の推移」資料
そうした留学生のうち日本で就職を望む学生へ向けて、日系企業を紹介するイベントが、さまざまな就活支援企業や自治体の主催で、日本の各地で、毎週のように実施されています。外国人留学生に向けた就職イベントに参加・出展することで、貴重な人材とコンタクトをとることができます。
また、留学生の就活に特化したものではありませんが、国際交流や異文化交流のイベント・セミナーに参加することで、国内にいる外国人のコミュニティと交流を深めることができます。イベントの主旨やエリアを選定することで、適切なスキルや経験をもつ人材と出会うことも期待できます。
5. 日本語教育機関と提携:
日本の教育機関で就学中の留学生も、あるいはすでに企業で就労している人材も、日本語力向上のために別途、日本語学校のような語学教育機関に通って語学学習をしている場合が少なからずあります。
また、そうした日本語教育機関も積極的に、そうした“生徒”を募って彼らの日本語スキル向上のための教育カリキュラムを実施しています。
それらの機関に働きかけて、提携することで、日本語コミュニケーション能力の向上に高い意欲をもつ、優れた外国人材にコンタクトすることができます。
6. 日本で生活している外国人コミュニティにアクセス:
日本に来て、国内で活動している外国人は、たとえば同じ国出身の人などで互いに連絡を取り合って情報交換などをするコミュニティを作っている場合が少なくありません。多くの場合は、SNSなどでつながっている間柄ですが、出身国でのつながりではなく「同じエンジニア職」の人が集まって、技術的情報や、仕事先の企業の情報などを交換するためのコミュニティもあります。
そうしたコミュニティにアクセスできれば、優秀な人材を、広告費などのコストをかけることなく採用できる可能性も期待できます。
ただ、こうしたコミュニティへ、いきなりリクルーティング目的の人間が入り込めるものではないので、すでに社内に定着している外国人エンジニアがいる場合や、あるいは社外の人でもコネのあるエンジニア職の外国人がいるような場合に、紹介をしてもらってコミュニティ内での人脈をひろげていく、というのが適切な進め方でしょう。
7. 自社の多文化環境を戦略的にアピール:
自社が国籍にこだわることなく、優秀な人材を広く求めていることや、すでにそうやって様々な国の、さまざまな文化背景を持つ社員が活躍していること(あるいは、そういった企業文化を目指していること)などを、自社公式サイトなどのオウンドメディアや、あるいはニュースリリースなどで広くアピールすることで、外国人材に対して「この企業は、自分の就職・転職先としても十分に魅力的かもしれない」と感じさせることができます。
つまり、そうした方向での自社イメージを明確に打ち出すことで、優れた外国人エンジニア人材を惹きつけることができる「ブランド戦略」を取る、という方法論です。
日本国内にいる外国人を採用する場合のフロー
すでに日本での就労経験があり、長期滞在している外国人を、新たにエンジニアとして採用する場合には、以下の流れで進めていくことになります。
1.在留資格の確認
まず在留資格認定証明書の期限を確認します。期限切れの場合は不法滞在者ということになり、雇用した会社にも不利益が生じますので、当然雇用することはできません。なお在留資格の申請には、1~3ヶ月程度の時間がかかります。もし資格の期限切れが3ヶ月前後に迫っている場合は、至急の更新手続きが必要となってくるでしょう。
採用を検討している外国人の前職がエンジニアである場合は、その人材がいま取得している在留資格のままで大丈夫です。しかし、エンジニアと異なる職種で働いていた人材である場合は、その人材が住んでいる場所を管轄している出入国在留管理局で在留資格変更の手続きをとる必要が生じます。在留資格というものは、「外国人の活動予定と在留のための条件が適合していること」が前提となっているためです。
※出入国在留管理局の管轄区分については、こちら をご参照ください。
ただし、エンジニアという職業にはある程度の教育や実務経験が必要であり、その個人の職務経歴が在留資格を交付する根拠ともなっています。例えばそれまで飲食業に従事していた外国人を、いきなりエンジニアとして雇用することは、現実的に困難です。本人が独学などでプログラミング技術を身につけ、それがどれほど高い水準であったとしても、就労資格が現職と合致していない人物を雇用していると、企業側が「不法就労助長罪」に問われる可能性があると、理解しておかなくてはなりません。つまり日本企業がとるべき実際の採用活動としては、「前職でエンジニアとして就労していた人材を、自社へ就労させる」ということが現実的であるということになります。
いずれにせよ、資格の再交付や変更には数ヶ月単位の時間が必要になると、あらかじめ理解しておきましょう。
また、前述の通り、「すでに日本国内でエンジニア職として就労している人材」を転職させて採用する際は在留資格変更の必要はありません。しかしその際も、その人材が転職先(つまりあなたの会社)で業務に就く際に、それがきちんとルールに則った “合法的な転職” であることを証明しやすいよう「就労資格証明書」の交付を申請しておくと効率的です。
これは在留資格の証明書とは違って、必須のものではありません。しかし、これを得ておくことで転職を希望する外国人本人にとっても、その人材を採用したい転職先の企業にとってもリスクを低減することができます。
「就労資格証明書」について、次項で詳しくご説明します。
2.就労資格証明書交付
すでに日本での就労していた外国人を雇用することは、「転職」ということになります。
エンジニア→エンジニアという転職の場合、在留資格の再申請は不要に思えますが、在留資格というものは「勤務する会社の経営状況などを審査したうえで発行された資格である」という点には、注意が必要です。
転職すると「勤務する会社」が変わることになるので、場合によっては「転職後の在留は認められない」と判断され、そのままにしておくと、その外国人エンジニアは不法就労となってしまう場合があります。
こうした事態を防ぐため、転職の際は外国人本人が、新たに『就労資格証明書』の交付を申請することをおすすめします。こちらがスムーズに交付されれば、問題に発展することはありません。
就労資格証明書とは「新しい転職先で働くことができるかできないか」を、出入国在留管理局が証明してくれる文書です。
次のような書類を揃えて、出入国在留管理局にて申請手続きを進められます。
(出入国在留管理庁の公式サイト www.moj.go.jp/isa/ からダウンロードできます)
□パスポート (原本提示)
□在留カード (原本提示)
□申請人(=人材)の職歴書 (エンジニア職に従事した事業体や内容、期間を明示)
□その職歴を証明できる文書
□最終学歴の証明書(卒業証書)
□前職の会社発行の退職証明書
□前職の会社発行の源泉徴収票
□前職の前年分の給与所得の源泉徴収票等法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
□転職先の概要を明らかにする資料(会社の登記事項証明書・決算書・会社案内パンフレット等)
□転職先との雇用契約書
□転職先での職務内容説明書
□転職先の採用理由書 (A4サイズ2枚程度に、その人材の採用に至った経緯や雇用した理由などを記載)
□申請人の写真(縦4cm×横3cm)
□申請手数料 1200円
申請をしてから、交付されるまでおよそ1ヶ月~3ヶ月 かかります。
「在留資格」の方の期限が残り3か月を切っているような場合は、「就労資格証明書」申請中に在留期限が切れて申請がムダになる可能性も出てきますので、ご注意ください。
また、企業は、採用しようとする外国人材に対して、「就労資格証明書」の提出の強制や、人材がそれを提出しないことを理由として本人に不利な扱いをしてはいけないという点にもご留意ください。
このことは入管法に、次のように明記されています。
何人も、外国人を雇用する等に際し、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
就労資格証明書は、転職する人材にとっても、その人材を受け入れる転職先の企業にとっても有益なものですが、これはあくまで任意の制度であり、必ずしも不可欠なものではない、と理解しておく必要があります。
3.採用準備
日本企業が外国人エンジニアを採用する場合、留意すべきいくつかの重要ポイントがあります。
まず、採用の際には「契約書の作成」が不可欠であるとご認識ください。日本ではまだ、採用時に雇用契約書を用意しない企業もあるかと思いますが、海外と異なり、契約書がないとトラブルの解決が複雑化し、不利な立場に追い込まれる可能性があります。雇用契約書は必ず作成して、人材と取り交わすようにしましょう。
雇用契約書を作成する際には、労働条件や契約内容をできるだけ詳細に記載することが大事です。将来的にトラブルが生じた際には、この詳細な契約書が問題解決のための重要な役割を果たすことになります。
また、言語の壁がある場合には、日本語だけでなく、被採用者の母国語にも対応した書面を作成するといった配慮も必要です。母国語での契約書や重要事項の説明は、誤解や不確実性を避ける上でとても効果的です。
さらに、採用後の支援体制を整えることも大切です。社内業務を円滑に進めるために、外国人エンジニアが適切な教育やトレーニングを受ける機会を提供することは、ぜひとも取り組んでいただきたいところです。言語や文化の違いを乗り越え、円滑なコミュニケーションと業務遂行を図るための支援なども、そうした取り組みの中でとくに大きな意味をもってくるでしょう。
また、生活面においても、質の高い住環境や生活サポートが提供されることが望ましく思われます。外国人エンジニアが安心して仕事に集中できる環境を整えることで、彼らのモチベーションや生産性を向上させることができます。
そうした社内体制の整備を十分に行っておくことが、採用後のエンジニアの満足度や企業の業績向上に大きくつながるはずです。
日本国内で転職活動中の外国人エンジニアを採用する際の確認ポイント
本ページの上部でもご説明しましたが、外国人エンジニアを採用する際には、彼らの能力だけでなく、在留資格や経歴などさまざまな要素に考慮する必要があります。
在留資格との適合が確認できなければ、いかに優れた技術スキルを持つエンジニアであっても雇用できないことは前述の通りです。面談などで違和感を抱いた場合には、あらかじめ「もし在留資格の許可が得られなかった場合は、どうしますか」といった話を切り出しておくのは有効な手段です。
採用プロセスが進んでしまっている場合でも、雇用契約書に「在留資格が許可されなかった場合、内定は取り消す」という一文を加えておくことで、予期せぬトラブルを回避することができます。
また職務経歴書の中に、就労していない期間が多く見られた場合には、きちんと実態を確認しておきましょう。万が一、就職活動中などの収入が無い期間に生活のために届け出なく労働を行った人材だったりすると、会社に不利益が生じる恐れがあります。しっかりと説明を聞き出しておくことが必要です。
本人に責の無い事やプライベートに踏み込み過ぎる事を聞きだすのは避けなければなりませんが、レジュメを見て、スキルや経歴に不明なところや疑問点がある場合は面接時にしっかり確認をしてクリアにしておくと良いでしょう。本人の日本語能力も、そのときに把握することができると思います。
多岐にわたる要素を十分に検討し、採用に関わるリスクを最小限に抑えるよう努めましょう。
外国人留学生を新卒採用したい場合の注意点
留学生として日本で学習をしてきた学生(大学生、専門学校生)が、卒業にあたって日本の企業に就職する場合は『新卒採用』ということになり、転職活動中の『中途人材』とは異なる準備が必要となります。その要点は非常に明快。それまでの在留資格を「留学」から「就労」へ変更する、ということになります。
「留学」の在留資格は、原則として就労不可の資格です(アルバイトとして働ける「資格外活動許可」という例外を除く)。そのため、就職をして収入を得る仕事をするためには就労可能な在留資格への変更が不可欠になるわけです。
資格変更の申請は留学生本人が行いますが、審査に1ヶ月以上の時間がかかるため、その受付は、卒業前の12月~1月ごろから開始されているとのことです。
在留資格変更手続きは、出入国在留管理局で行われ、その手続きでは次のような書類が必要となります。
□在留カード (原本提示)
□パスポート (原本提示)
□履歴書(学歴・職歴について)
□在留資格変更許可申請書(窓口にて配布;もしくは公式サイト www.moj.go.jp/isa/ からダウンロード)
□写真(縦4cm×横3cm)
□手数料 4000円
●企業側が用意する書類:
□会社案内(事業内容が載っているパンフレットなど)
□雇用契約書の写し (職務内容・雇用期間と賃金の記載が必要)
□3ヶ月以内に発行された「登記事項証明書商業法人登記簿謄本」
□直近年度の「決算報告書」の写し
□前年分の給与所得の源泉徴収票等の「法定調書合計表」(受付印のあるものの写し)
□定款の写し
□雇用する理由書
※企業の規模(カテゴリー)によってこれら以外に要求される書類もあります。
●大学から用意する書類:
□卒業証書(卒業見込み証明でも可)原本
※情報出典:出入国在留管理庁「★在留資格:技術・人文知識・国際業務」
なお、卒業証書(もしくは卒業見込み証明)の原本が必要となっていますが、万一、何らかの理由で「卒業ができない」という事態が起きると、新しい在留資格認定証明書を受け取ることもできなくなってしまいますので注意が必要です。
また在留資格認定証明書は「これまでの学習内容と就職先の業務内容が合致していること」が、交付の条件となります。エンジニアに必要な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、その職務内容に適した教育、つまり(エンジニアの場合は)理系の学部・学科で該当する分野を履修してきた外国人留学生に対してのみ交付されます。
それ以外の分野を専攻してきた学生は、いかに本人の技術スキルが高くても、証明書交付の対象とならない可能性がありますので、採用企業側も内定を出す前に、その点をしっかりと確認徹底するようにしてください。
外国人エンジニアを派遣社員・契約社員として採用するという選択肢は?
外国人をエンジニアとして採用する際、派遣や契約社員という形態で雇用することは可能なのでしょうか?答えは「可能」です。
ただし正社員と同じく、職務内容が在留資格と適合していることが前提です。派遣や契約先が変わるごとに「在留資格認定証明書」を再交付するという手続きが必要となりますが、これが最もスムーズな方法と言えます。
派遣という雇用形態の場合には、外国人エンジニアと派遣先の間に、派遣元が存在しています。出入国在留管理局などとのやり取りを行う責任があるのは、派遣元のほう。この派遣元の企業の業績が良好で「事業体として十分、信用に値する」と判断されないと、この派遣元からの外国人の派遣そのものが認められないというケースもあります。
また派遣先も「外国人社員に関する煩雑な手続きはすべて、派遣元に任せておけばよい」というわけにはいきません。
派遣先は、出入国在留管理局から会社の業績などについて細かく確認されるようなことはありませんが、「外国人の労働力だから」と賃金を安く設定することはできませんし、人材に対して在留資格に適合しない職務をさせているようなことが判明すれば、法律違反として罰せられることとなります。
これは、その業務が、たとえ当の本人の希望に沿うかたちであっても違法とみなされますので、注意が必要です。
まとめ
すでに日本国内に入国している外国人エンジニアの採用は、海外在住の人材を採用する場合に比べて、ビザ(査証)など渡航の手続きが不要な点は好都合ですが、やはり、在留資格についての確認や手続きがある、という事情についてご説明いたしました。
在留資格は、外国人を採用するうえで、いかなる場合でも必須の条件となります。つまり、その外国人材自身がいかにエンジニアとしてのスキルを備えていても、適正な在留資格が取得できていなければ、それも「転職先での在留資格」が認められていなければ、採用して就労してもらうことはできない、という決まりになっているわけです。
この在留資格のルールは、人材自身が「雇用先で不当な扱いを受けること」や、「劣悪な労働条件で働かされること」を防ぐ意味では非常に有効ですが、「本人のポテンシャルで内定を勝ち取る」、「未経験でも意欲を買われる」といった流れで、外国人が自分の望む日本企業で就労することはなかなか実現しにくいこととなっています。
とは言え、国の定めたルールは、遵守しなくてはなりません。企業は現状を踏まえたうえで、最適な人材を採用する心構えを備えていきましょう。