外国人採用後の入社フォローと外国人雇用管理
近年の日本では、外国人の就労者受け入れが一般化しつつあります。「よし!我が社も、外国人エンジニアを雇用しよう」と考えることが、まず初めの一歩。しかしこれまで日本人だけで構成されてきた会社に、文化背景の異なる外国人を受け入れるのであれば、それなりの意識改革が必要となってきます。
外国人エンジニアの受け入れ時に意識すべきポイントは?
外国人と共に働く職場環境を整備するために、特に意識しておくべきポイントがあります。以下に紹介していきますので、内容をチェックして下さい。
成果に対する評価を明確にしていく
これまでの日本社会は古い伝統を重んじながら(あるいは “前例” を踏襲するやり方で)、形成されてきました。
しかし個の自立を重んじるヨーロッパ、開拓精神を礼賛するアメリカ、そして理想的な共産主義社会の構築に取り組んできた中国などの国民は、まず個人の努力で成功を収め、正当に評価されたうえでキャリアアップを重ねることを、理想としています。このような傾向を無理に捻じ曲げ、日本式の『型』へ押し込めようとすると、外国人の雇用がいつまでも軌道に乗らず、早期離職者が量産されていくことに繋がりかねません。
『社員の能力を、公正に評価する風土』を根付かせていくためには、以下のように社内の仕組みを変更していく必要があります。
- 曖昧なビジョンはNG。双方が採用後の業務内容やキャリアアップをイメージしやすいよう、募集の段階から具体的な職務・キャリアパスを明示し、そのポストにふさわしい人材を採用する。
- 社内の評価基準が曖昧だと「グループのサポートがあったから」「上司が有能だったから」などの意見が発生しやすくなり、個人への正当な評価が得にくくなる。その対策のため国籍に関わらず、全社員が納得できる『公正な人事評価基準の整備』を導入する。
- 人事評価の結果を、きちんと昇進へ反映できるシステムの構築を、早急に構築する。
年功序列など、古い価値観の中で勤続してきた世代には耳の痛い指摘も含まれるかもしれません。しかし外国人の働きやすい環境を整備するため、意識改革に取り組んでいきましょう。
言葉の壁に対処する
外国人を雇用するにあたり、最も大きな障害として立ちはだかるのは、言葉の壁です。
世界的に見て日本人の話者数は、英語や中国語に遠く及ばず、ひらがなや漢字が混在するという表記の難しさも相俟って、習得の難しさは筆舌に尽くし難いものがあります。それゆえに管理者は、以下のような対策を講じることが強く推奨されます。
- 習得の機会(教室への通学やウェブ講座の受講)を積極的に提供する。
- 日本語検定の合格者に報償を与えることで、モチベーションアップを図る。
- 業務上や災害時に使う専門的な言葉/表現に関しては、採用者の母国語との対照表を作成しておく。
また同様に、グローバル言語である英語の習得は、日本人の社員にとっても有益です。外国人に日本語検定受験を推奨するだけでなく、全員に英語検定受験を推奨することで、社内の言語コミュニケーション能力を向上させていくと良いのではないでしょうか。
受け入れ時のフォローまとめ
外国人エンジニアの雇用の実績を積み上げれば、受け入れ側は先例を参考に体制を強化していくことができます。
とは言え、そうした人材が抱く「環境に馴染めるだろうか」という不安に変わりはありません。彼らが一日も早く社内に溶け込めるよう、受け入れ時のフォロー体制を強化していく必要があります。
仕事面・精神面でのフォロー
不慣れな環境で仕事をこなし、生活していく中で、外国人は大小のストレスを抱えていくことになります。その解消に役立つのが、相談役の存在。すでに同国人の先輩がいるという場合はケア担当として最適ですが、適当な人材がいないという場合は、あらかじめ英語が堪能な社員にサポート業務を依頼しておきましょう。
また各都道府県のハローワークには『外国人雇用管理アドバイザー』が在籍しています。外国人エンジニアのフォローをどのように行うべきか迷ったら、まず無料相談してみてはいかがでしょうか。
法制手続きのフォロー
外国人を雇用する際には「外国から日本に呼び寄せる」というケースと、「在留者の転職先になる」というケースが考えられます。
外国から日本へと呼び寄せる際は、まず在留資格認定証明書を、代理人として交付申請しなくてはなりません。交付後は本人への資料の郵送や、本人が現地領事館にてビザの給付手続きを行う際の指導など、やることが山積み。あらかじめ人事課の社員が一連の流れを把握し、スケジュールを管理しながらスムーズに進めていくことが大切です。
外国人の転職先として受け入れる場合でも、現行の在留資格がそのまま使えない場合もあります。就労資格証明書交付申請が必要なのか、それともハローワークへ雇用の届け出を申請するだけで済むのかはケースによって異なりますので、現行の在留資格をよく確認しましょう。また、転職に当たっては外国人社員本人が所属(契約)機関に関する届出を出入国在留管理庁に提出する必要があります。本人とよく確認し、場合によっては出入国在留管理庁などへ同行して、遅滞なく必要な手続きを行いましょう。
さらに雇用した外国人エンジニアが無事に定着してくれた場合は、在留資格の更新時期に留意し、都度通告を怠らないようにしたいものです。
家族へのフォロー
家族と同居する外国人エンジニアを採用した場合は、そのフォローにも配慮しなくてはなりません。留意項目の一例を挙げましょう。
- 家族を同行する場合、本人だけでなく、家族の在留資格認定(『家族滞在』)も交付申請。
- 同行した家族が、日本での就業を希望し始めた場合『資格外活動許可申請書』の記載/申請が必要。
- 正月などの行事に帰国したいという場合、日本とは時期がズレている場合があるため、長期休暇の時期の調整が必要。
そのほか、夫婦に子供が産まれるというケースには、病院を紹介すべきなのか、里帰り出産を推奨すべきなのか、本人たちの意志を確認しながら進めていく必要があります。
外国人の雇用・受け入れをする際に企業が守るべきルール
まず法的に定められた課題として徹底しなくてはならないのが「外国人も、日本人と同様の待遇で迎え入れる」という原則です。こちらは外国人エンジニアの雇用に必要な、在留資格認定証明書交付の条件ともなるため注意しましょう。「審査に通過した企業だが、実態は問題だらけだった」といった結果を招かないよう、雇用条件等の公正を保って下さい。
合わせて義務化されているのが『雇用状況の届け出』です。「外国人を雇用した」あるいは「雇用した外国人が離職した」という場合、該当者の氏名、在留認定資格/期間などの情報をまとめ、厚生労働大臣に届け出ることが、すべての事業者に義務付けられているのです。こちらを怠ると「外国人労働者の受け入れ先として不適切」と判断され、将来の在留資格認定証明書交付がスムーズに進まなくなる可能性もありますので、注意が必要です。
もちろん外国人を含むすべての社員が、安心して日々の労働に取り組めるよう、社内環境のメンテナンスに努めることも、基本ルールとして非常に大切です。
まとめ
生まれ育った母国を離れ、日本で働くことを決意した人を受け入れるのは、想像以上に大変な作業です。日本人なら個人の裁量に任せられることでも、外国人の場合は手取り足取りのフォローが必要となる場合が多いからです。
できれば外国人特有の問題解決を助ける専門スタッフを、複数人用意しておきたいもの。手厚い受け入れ態勢が整えられた会社には、優秀なスタッフが集まり、定着に繋がりやすいはずです。