インドネシア人エンジニアの採用ガイド
意外なほど人口数が多く、イスラム教徒の数も世界一というインドネシア。同国で生まれ育ったエンジニアには、どのような特徴があるのか紹介します。
【地理・文化・政治・宗教観】インドネシアってどんな国?
インドネシアは東南アジアの南部にある島国で、首都ジャカルタのあるジャワ島だけでなく、観光で有名なバリ島、そして広大な熱帯雨林を有するボルネオ島など、千を超える島で構成されています。そのため人口は非常に多く、世界でもベスト5にランクインするほど。温暖なだけでなく湿度も高いため、年間を通して日本の真夏日のような気候が続きます。
国民の8割はイスラム教を信仰しており、実は世界で一番イスラム教徒が多い国としても知られています。信者は敬虔ですが、中東のような原理主義に走る者の数は、それほど多くありません(ただし一部の州で、イスラム教徒住民の独立運動などが起こっています)。
インドネシアは他の東南アジア諸国と同じく、植民地支配に苦しんだ歴史を持っています。オランダの支配が18世紀ごろから数百年に渡って続いたほか、第二次世界大戦中は、日本軍による占領も経験。圧政の中で高まった民族意識は独立運動として結実し、戦後の1949年、正式な独立を果たしました。8月17日はその記念日であり、華やかな祝賀イベントが、今も毎年開催されています。
【国民性】インドネシア人エンジニアの特徴は?
さまざまな火山島によって構成されているインドネシアは『多民族国家』なので、その特徴を一概に述べることは難しくなっています。ただし温暖な気候の中で暮らす民族なので、のんびり温和な性格の人物が多いのは、確か。人当たりはやわらかく、笑顔を絶やしません。また先述の通り、イスラム教を信仰している人が多く、宗教に基づいて敬虔に行動する、ストイックな一面も持ち合わせています。
インドネシア人の中には、日本を愛好している人が多く、日本語を学習する若者の数も多くなっています。さまざまな国の中から就労先に日本を選ぶ人は、あらかじめ日本文化に対し、ある程度の知識を持っているはずです。
なおインドネシアは農業国で、エンジニアなどの職に就く人の数は、それほど多くありません。こうした環境で育っていると「とりあえず食べ物はあるし、がむしゃらに働く必要はない」とのんびり構えるようになります。その国民性が、日本人に「インドネシア人は、まじめに仕事をしない」という感想を抱かせてしまうこともあるようです。
【新卒・転職】インドネシア人エンジニアの就活・採用事情
先述の通り、インドネシアは農業国です。また天然資源が豊富なので、その輸出に頼る経済構造が色濃く存在し続けています。こうした背景ゆえ、教育のレベルも、決して高いとは言えません。
またインドネシアの若者の中には、せっかく大学で学問を修めても「専攻は宗教学で、教師を志す」という学生が多く、理工系の科目にはあまり人気が集まらないようです。IT分野に関するリテラシーも低めで、インターネット工事のミスが発覚し、復旧に時間がかかるなどの失態が各地で繰り広げられているのだとか…。
とは言え、PCやスマートフォンはインドネシア人の生活に深く浸透し始めており、ECを利用する人の数も上昇しています。広い国土ゆえ、地域に強い専有性を持つローカル通信会社が複数存在しているのも、大きな特徴のひとつ。大型データセンターも徐々に誕生してきているため、今後はエンジニア職を志す若者の数も、増えていくでしょう。
もちろん各国の企業が、オフショアの拠点として首都・ジャカルタに進出するという例も増加中ですよ。
【仕事観】インドネシア人エンジニアが就職先を選ぶ際に重視するポイント
インドネシア人は求職にあたり、給与や休暇制度といった、どの職業にも通じる一般的な条件を重視する傾向があります。
先述の通り、インドネシアは基本的に資源豊かな農業国であり、国民の多くは、構成人数の多い大家族で生まれ育っています。「本当に困った時は、誰かが助けてくれる」という意識が強いため「がむしゃらに働く」というタイプのエンジニアは、あまり多くありません。男性の中には「裕福な家庭の女性と結婚後、まったく仕事をしなくなる」という人もいるほどなのです。
また中国人や韓国人のエンジニアとは異なり、「技術を学びながら転職を重ね、最終的に独立起業する」など明確な目標を持つ人はあまりおらず、目先の仕事を淡々とこなす傾向があります。
インドネシア人は「プライベートな時間も充分に持ちつつ、快適に働ける職場環境であるかどうか」を重視していると、あらかじめ理解しておきましょう。
もし「タイトな制作期間で残業が続くことも当たり前」という業務が常態化している企業に採用されたとしても、早期離職してしまう可能性が高めです。
【どうやって出会う?】インドネシア人エンジニアを採用する方法は?
外国人エンジニアの中でも、特にインドネシア人を採用したいという場合、どうすべきなのでしょうか?以下に見ていきましょう。
1.人材派遣会社の利用
日本で働くインドネシア人エンジニアの数は、それほど多いとは言えません。このため求人サイトなどで募集しても、多くの応募は期待できないでしょう。
その点、外国人の人材派遣に慣れている会社であれば、国籍に関わらず人材の学歴や経歴を熟知しています。そうした会社に、インドネシア人の人材を確保しているかどうか、確認してみて下さい。
なお人材派遣会社を通じた選考の場合、採用に至った場合のみ費用が発生する形態が一般的といえます。
2.教育機関との連携
インドネシア人留学生を受け入れている教育機関と信頼関係を築き、新卒者獲得を目指すのも、ひとつの方法です。
例えば語学学校などで日本語を学んでいる学生は「日本の文化が好き」など、何らかの理由があって来日しています。彼らにとって「就労に伴い、引き続き日本に在留できる」という可能性は魅力的に映るはずですから、有効な採用方法として検討してみると良いでしょう。
【注意点】インドネシア人エンジニアを採用する際に意識すること
インドネシアでは「IT業界の大規模開発プロジェクトがそれほど多く行われていない」という現状があります。このためインドネシア人エンジニアの、経験値の低さをあらかじめ理解しておかなくてはなりません。日本側の管理者は、業務を粘り強く遂行していくエンジニアの職務を、きちんと指導する姿勢が必要となってきます。
さらにインドネシア人は「エンジニア職でキャリアを積むことにより、どのような展望が開けてくるのか」という点について、明確なビジョンを持ちません。将来の可能性を詳しく説明し、モチベーションアップへと繋げていくことが大切なのです。
なおインドネシア人には、親しみやすい性格ゆえにおしゃべり好き、噂好きという一面があります。職場内で必要以上この特徴を発揮させないよう、きちんと管理していかなくてはなりません。
またイスラム教徒は飲酒や豚肉を食べることを禁じられています。また『ラマダーン』と呼ばれる断食の月は、1ヶ月間に渡って日中の飲食を絶ちます。こうした習慣の差異を受け止める意識を、あらかじめ社内に醸成しておきましょう。
インドネシア人エンジニアの採用まとめ
望めば自給自足も可能な環境で生活してきたインドネシア人の社会は、IT業界の成長を重視しているように見えず、有望な人材が育ちにくい環境と言えます。同国のエンジニアに、即戦力としての働きは、あまり期待できないかもしれません。
しかし日本で業務経験を重ねるうちに、成長する可能性を持つ人材も、少なからず存在しているはずです。彼らを育て上げることで、将来的に現地でのスムーズな事業展開が進められるようであれば、しめたものです。