外国人採用の不安「文化の違いは大丈夫?」
「これまで日本人だけでやってきた企業に外国人を入社させることで、カルチャーギャップが多発するのではないか…」。これはもっともな心配と言えます。特に仕事に対する考え方や取り組み方の違いは、最も気になるポイントです。
国の数だけ異なる文化がある
「カルチャーショック」や「カルチャーギャップ」という言葉があるように、異なる国の人間が交流する際、理解しづらい習慣や行動に直面することがあります。
オランダの社会心理学者であるヘールト・ホフステード博士は、数十年に渡る国民文化研究の中で蓄積されたデータを元に「ホフステッド指数」を作成しました。国民文化を6次元のモデルに分け、分析するのです。モデルの中には「集団主義か、個人主義か」、「短期志向か、長期志向か」などの項目が含まれています。
「ホフステッド指数」をもとに検証すると、日本に近いのはハンガリーやドイツ、イタリアなどヨーロッパの国々という意外な結果が出ています。またアメリカとの近似値は、かなり低いという結果も出ているようです。
このように、各国の文化や国民性には大きな違いがあります。異なる文化や価値観を持つ外国人スタッフと共に働くためには、背景を理解していくことが大切。また日本独自の文化や価値観を相手に知ってもらうことも、非常に重要です。
こうした歩み寄りの姿勢がなくては、外国人採用自体が暗礁に乗り上げると、まず始めに理解しておきましょう。
日本と各国の文化の違い~仕事編~
まずは各国の文化や感覚の違いを見るために、例として下記の5つの国をピックアップし、それぞれの国で多く見られる仕事に対する考え方や取り組み方の違いについてまとめてみました。
中国人の仕事に対する考え方や取り組み方
同じアジアに位置する大国・中国からは、日本に大量の人材が流入中。国籍別ではダントツトップというのが現状です。
直行便なら首都・北京まで4時間程度と距離の近い国ですが、国民性は日本とはあまり似ておらず、仕事に対する考え方も大きく異なります。
まず中国には終身雇用という考え方がなく、転職も当たり前。企業より個人のキャリアアップを重視します。そのため給与や待遇に対する考え方も、シビア。成果を正当に評価しない環境には、不信感を募らせます。また自己主張することを恐れないので、馴染まない職場にはすぐ見切りをつけてしまうでしょう。
また縦の関係を重視せず、上司に対して意見することもしばしば。しかし自分自身が公衆の面前で叱責されることを大変嫌うという特質を持っていますので、慎重に相対することが大切です。
なお中国は現在、IT業界が急速に成長中ですので、エネルギッシュで有能な人材が、数多く存在しています。
アメリカ人の仕事に対する考え方や取り組み方
世界経済の中心であり続けている、アメリカ。日本との関係も深く、中には配偶者を得て日本に在留している人もいます。
そんなアメリカ人はコミュニケーション能力が高く、パイオニア精神を尊重します。新しい分野へ挑戦することには積極的で、ワン&オンリーな価値を持つ人を無条件でリスペクトする傾向もあります。
その反面「やるべきと決めた仕事」または「与えられた仕事」が終わってしまうと、周りなど気にせず、すぐプライベートへ戻ってしまいます。集団よりも個人のキャリアアップを重視するのは中国人と同じで、転職も当たり前。和を求めたがる日本人の傾向には、積極的に馴染もうとしない人が多くなっています。
また優秀な人材には、母国で活躍するチャンスが数多くあるため、外国人ならではの存在意義を見出せない日本企業には、長くとどまらないかもしれません。
フィリピン人の仕事に対する考え方や取り組み方
東南アジアの島国であるフィリピンから、日本までの距離は4時間程度。しかし、国民性に関しては、共通点が驚くほどありません。
まずフィリピン人の就労態度は勤勉と言い難く、日本人の目には『怠惰』と映ることが多いようです。就労中にスマートフォンをいじったり、おしゃべりに興じるのも当たり前。きちんと指導するだけでなく、当人たちに「日本で成功する」という意識を目覚めさせない限り、管理は難しいかもしれません。
また日本社会に比べ、女性の進出度が非常に高いという特徴もあります。フィリピンで管理職に就く人の、半数近くは女性。やる気と実力さえあれば、性差に関係なく活躍できるという社会を実現しているのは立派です。
なおフィリピンでは、英語が公用語。全体の英語能力が日本人とは比較にならないほど高いため、通訳業務を任せられる人材も数多く存在しています。
フランス人の仕事に対する考え方や取り組み方
フランスはヨーロッパ諸国の中でも日本人に馴染みが深く、長い歴史と各時代の文化様式の華麗さに魅了される人も、数多く存在しています。
そんなフランスに住む人たちは、仕事とプライベート、双方の充実を目指す生き方を理想としています。まずフランスには残業がなく「1週間の労働時間は35時間、夏のバカンスは約5週間取得」と法律で定められています。
このため必ずしも週5日出勤する必要はなく、合計で35時間勤務していればOK。また「バカンス中は、仕事が滞るのも仕方ない」という考え方が浸透しています。日本人からすると「それで社会が回るの?」と不思議になりますが「バカンスを目指して仕事を進め、終わらせる」という目標を国全体で共有しているため、問題は発生しにくくなっているようです。
このような環境で生きるフランス人の発想は、自由。転職はもちろん、年齢を重ねてからの異業種転向もめずらしくありません。その奔放さを上手にコントロールするには、優れた管理能力が必要となってくるでしょう。
インド人の仕事に対する考え方や取り組み方
インドは国土が広く、人口の数が膨大です。地方ごとに特色は異なり、信仰する宗教によって意識や生活習慣も異なるため、インド人を採用する際には、まず一人ひとりの背景をきちんと確認しておく必要があります。「インド人だから、こうだろう」という思い込みが通用しない場合もあります。
そんな前提を共有したうえで話を進めていきましょう。まずインド人の労働姿勢は、非常に合理的です。残業や年功序列を嫌い、個人のキャリアアップを重視します。それゆえ、転職も当たり前。給与や待遇にも、厳しい視線を注ぎます。人口が多いなか周りよりも少しでも前に出て生き抜いていくという文化のもと、ハングリー精神が強く、「指示されたことを受け身で作業する」姿勢よりも、自分がリーダーとなり周りをリードしていく気質が強くみられます。
反面、時間にルーズで失敗を素直に認めないという傾向もあります。宗教や家族を大切にする習慣を持っているため、理解が得られないことを大きなストレスに感じる可能性もあります。なお、インドには英国領だった歴史があるため、英語が堪能な人材が非常に多くなっています。有名なIT企業の最高責任者にインド出身者が多いは、こうしたリーダーシップ気質や英語力の高さが関係しているといえます。
外国人採用における異なる文化の受け止め方
本ページの内容を一読するだけでも、国により労働に対する意識や姿勢が異なることが、充分にお分かりいただけたのではないかと思います。
戦後の日本は経済的に豊かになったため、近年の若い世代は積極的に海外へ足を伸ばし、異なる文化に触れる体験を持っています。ところが国内の教育機関ではいじめ被害が多発しており、集団内の異分子を徹底的に排除したがる日本人の陰湿さが、浮き彫りとなっています。
企業が外国人採用を決定した場合は、日本人の特質がネガティヴな方向に発揮されないよう、社内の意識統一を図っていかなくてはなりません。
異なる国の文化を目の当たりにした時、日本人スタッフに「ひいた」という言葉を発させないためには、彼らの「知的好奇心」を刺激することが肝心です。外国人の言動に触れることで、多様性への理解が生まれた結果、自分自身の姿を客観的に見つめられるようになる、といった理想を共有することで、社内に外国人を受け入れる基盤が育っていくのです。
もちろん業務上では、数多くのすれ違いが生まれるでしょう。しかし多少の失敗に屈してはいけません。「言わなくてもわかって欲しい」ではなく、泥臭いやり取りを根気良く続けていくことが、異文化交流の基本なのです。こうしたコミュニケーションの積み重ねが、やがて企業に国際的な競争力を与えていくこととなるでしょう。
外国人採用の不安「文化の違いは大丈夫?」まとめ
少子高齢化の時代を迎えた日本は、若年層の労働力不足という深刻な問題を抱えています。「日本人だけでやっていけば良いではないか」という考え方しか持てない企業と、新しいチャレンジを進んで取り入れていく企業とでは、この先の競争力に大きな差が生まれるでしょう。
異なる文化を受け入れる包容力は、今後の日本企業に必要不可欠。その実績こそ、最も重要な武器のひとつとなっていくでしょう。
このサイトでは、文化の違いや仕事の傾向について、国別にまとめています。【国別!外国人エンジニアの採用ガイド】
ぜひ参考にしてみてください。