外国人採用で人材を定着させる秘訣とは
周囲を見渡せば終身雇用制度が崩壊しつつあるのは明らかなものの、未だに終身雇用制度を前提とする企業体制を維持し続けている企業が数多く存在しています。そうした体制が外国人エンジニアの定着率を下げる原因となる場合もあるので注意が必要です。
「外国人エンジニアは定着しない」ってホント?離職・退職理由とは
外国人エンジニアの早期離職が続く企業は、社内に何らかの問題を抱えているはず。その理由を考えてみましょう。
「下積み」の意義を説明できない...
「石の上にも三年」ということわざがありますが、キャリアアップに応じて所属企業を変えていくことが一般的な外国人に、そんな説明をしてはいけません。「専門性が評価されず、機会も与えられない職場だ」と見切りをつけられてしまいます。
ライフスタイルの違いが考慮されていない…
「中国では2月ごろに旧正月を祝う」といったように、年中行事や宗教による生活習慣の違いは厳然と存在していますが、その違いを理解し、できるだけ受け入れる姿勢が大切です。
とは言え「あの人は外国人だから」という特別扱いが行き過ぎると、日本人社員の間に不満が広がる可能性があり、外国人はますます居心地の悪さを募らせてしまいます。以下の点に留意していきましょう。
- 募集の際は、採用後の職務内容・待遇を明確にしたうえで最適な人材を採用する。
- 実力を発揮する機会を適宜与え、成果は正当に評価する。
- 業務上の意思疎通を『日本式の意向の忖度』に頼らない。
- 外国人の文化背景は、国籍ごとに調査しておく。休暇に関しては、外国人と日本人の双方に不満が出ないよう、調整案を考えておく。
こうした社内体制の整備は、外国人エンジニアの定着に役立つばかりではなく、別の雇用環境で働いてきた中途採用者(日本人)が新しい職場に馴染むうえでも役に立つでしょう。
外国人人材とのコミュニケーションで意識すると良いポイントは?
日本人は「雰囲気を察する・空気を読む」ことに長けていますが、多くの外国人は必要な事は言葉にして相手に伝え、言葉になっていない事は考慮しない事に慣れています。
こうした差異を完全に無くすことはできませんが、お互いに歩み寄り、スムーズなコミュニケーションを模索していくことは、充分に可能です。
まず説明が苦手な日本人社員には「自分の考えを、言葉や文章できちんと説明する」という姿勢がとれるよう、相応のサポートができるようにしておくと良いでしょう。
逆に外国人社員には日本人とコミュニケーションを図ることを根気よく学んでもらいます。
押しの強い外国人が「知ったかぶり」や「言い訳」を強い口調で押し出すことで、議論を避けたがる日本人社員が委縮してしまうという例も聞きます。逆に「部下の忖度」になれてしまった日本人社員から説明不足のまま仕事を与えられて、本来は力のある外国人社員が期待に沿った結果を出せないという例も聞きます。これでは良好なコミュニケーションが生まれません。
外国人エンジニアと日本人社員が忌憚なく意見を交わせる雰囲気を作ることは、実は、大切。とは言え、互いのプライドを必要以上に傷つけないよう配慮しつつ、円滑で活発なコミュニケーションが取れる気持ちの良い環境を作っていきたいものです。
外国人エンジニアのマネジメントにおける注意点
外国人社員を適切に管理するためには、その管理を担当する日本人社員の人選が大切になってきます。能力だけでなく人柄も加味しながら、以下のような人物を選出すると良いでしょう。
- 自社がなぜ外国人を雇用するのか、どのような効果を得ることが目的なのか、しっかりと理解している。
- 担当する外国人との共通言語が日本語以外にもある。
- 状況や問題を、全体的な視点から客観的に判断したうえで、行動できる。
- 厳しすぎず、相談しやすい雰囲気を持っている。
- 甘すぎず、問題点はきちんと伝えられる。
該当する人物を担当者に任命したら、雇用した外国人エンジニアの国籍とその文化について、きちんと学習させておくことも大切です。
管理の基本は『日本人社員との同等な扱い』ですが、不便を感じていることがあれば、できる限りフォローを行う配慮は不可欠。ただし特別扱いが孤立を招かぬよう、注意しなくてはなりません。
また「同国人を複数雇用した」という場合、必要以上にグループで固まらないよう、配慮する必要があります。中には「社内での母国語使用を禁止する」という企業もあるようですが、未成年者を雇用しているわけではないのですから、あまり過剰な制約を課すのも考えものです。業務上のグループを分け、日本人社員とも積極的に交流させるなど、手をつけやすいところから始めてみましょう。
外国人採用企業の定着取り組み例
すでに外国人エンジニアを採用し、定着させている先輩企業が、どのような取り組みを行ってきたのかを知ることは、非常に参考になります。以下に複数の例を挙げていきますので、ぜひ目を通してみて下さい。
- 外国人の現場責任者が活躍
- 英語の昇進試験も用意
- 英文メールでサポート
- 管理職の教育も積極的に実施
- オリジナル冊子を外国人社員向けに作成
- かつての社員が現地パートナーに成長
すでに外国人採用が定着していますが、中でも特に日本語能力の高い人材を、チームリーダーに抜擢しました。後から採用された外国人社員にとっては良きお手本となっており、慕われています。また日本人の社員からも有能な上司として尊敬されているほか、国籍の異なる社員同士のコミュニケーションを円滑にする役割を、充分に果たしてくれています。
元々、昇進時には、業務上の成果と共に、論文や面談の昇進試験を全員に課す制度を導入。この試験は基本的に日本語だったのですが、仕事ぶりは上々なのに、試験が合格ラインに達しない外国人社員が少なからず存在していたので、英語版を用意することにしました。結果として合格者が増え、業務へのモチベーションアップにつながっています。
外国人社員の中には、ストレスや不満を抱え込んでしまう人もいます。その対策として、弊社では英文メールでのフォローアップを実践しています。面と向かっては言いにくいことも、メールでなら相談可能なケースが多いのです。今後も「普段とは様子が違うな」という気配がある社員に対し、英文メールでのフォローを続けていく考えです。
外国人人材を採用する際は、社内でのキャリアパスをあらかじめ設計し、本人にも明確に伝えるようにしています。管理者にもその内容を共有するのはもちろん、入社後に適切な指導ができるよう、準備を整えてもらうようにしています。
役所での手続きや、銀行口座の開設などには、日本人社員が同行するようにしています。またこれらの手続き、そして勤務地から寮、周辺施設(病院やスーパーマーケットなど)の地図が掲載された冊子を社内で独自に作成し、配布して安心感を持っていただいています。
ある程度定着したうえで母国へと戻り、独立開業した人材を支援しました。企業として優秀な人材の離職は残念ですが、その代わり弊社の技術力や、理念を理解してくれる現地法人が新たに設立されることは、プラスとして機能しています。現在も取引先として良好な関係が続いており、弊社の外国人採用の、ひとつの成果ともなっています。
まとめ
本ページでは具体的な取り組みも含めてご案内をしてきましたが、外国人人材の定着のために決まった方法があるわけではありません。それでも、労使双方、又、日本人と外国人の双方が歩み寄れる環境と文化が大事と言えるでしょう。そのためには密接なコミュニケーションが欠かせません。
当たり前のことになってしまいますが、究極の目的は社員同士の相互理解が深まり、互いに目的を共有して、互いに成果を挙げることでしょう。平坦な道のりにはならないかもしれませんが、成果を挙げている企業は多数あります。決して不可能ではありません。