外国人採用後の上手な受け入れ環境づくりとは?
「来月には、社内に外国人エンジニアがやってくる」。そんな状況が訪れたら、きちんと準備にあたる必要があります。できれば専任スタッフを何人か選出し、スムーズな受け入れ態勢を整えていきたいものです。
外国人エンジニアの入社前に社内でおこなっておきたい受け入れ準備
『外国人労働者=単純作業』と認識している人はまだ数多くいますが、実際にはエンジニアなど、複雑な作業を要する分野にも、数多くの外国人就労者がいます。
その背景には、日本の『少子高齢化』という現状があります。「外国人の労働者に活躍してもらわないと、人手不足で事業が回らなくなる」という問題に向き合い、外国人採用にチャレンジを始めている企業は、数多く存在しているのです。
こうして雇用した外国人に、持てるポテンシャルを存分に発揮してもらうためには、彼らにとって働きやすい環境を整える努力が、必要となってきます。まず行うべきなのは、既存社員の意志統一。
- なぜ外国人エンジニアを雇用する必要があるのか。
- 彼らがスタッフに加わることで、業務上どのようなメリットがあるのか。
- 彼らとチームを組むことで、どのような目標達成を目指すべきなのか。
こうした内容を全員が共有することで、社内に「外国人エンジニアを仲間として迎える」、「彼らの仕事ぶりを尊重し、必要な場合はサポートを提供する」という精神風土が育まれていきます。
先入観や偏見、そして誤解を抱くスタッフがいるようなら、徹底的に話し合いを。問題の芽は、受け入れ前にできるだけ摘み取っておきましょう。
言語面での受け入れ環境づくり
外国人スタッフの雇用に関する懸念事項は言語が大多数といえます。採用時に日本語能力をある程度把握できていたとしても、ビジネスの場面で専門用語を流暢に操れるかどうかは、また別の問題。日本人同士なら、わずかな会話でも計れる意思疎通が実現しにくくなるため、思わぬミスが多発するという事態も考えられます。
このため、受け入れ側は事前にさまざまな対策を講じておかなければなりません。以下にその代表例を紹介しています。
- 日本語教室の情報を調べておく。働きながら学べるコースがあれば入学要綱をチェックし、通学体制を整えておく。
- 業務上最低限必要な専門用語に関して、採用する外国人の母国語との対照表を作成しておく。
- 日本人スタッフに「ゆっくりとした会話で正確に意志を伝える」、「なるべく理解しやすい単語を駆使して、会話を構築する」練習をさせておく。
- グローバル言語である英語が堪能な日本人スタッフが在籍している場合は、外国人エンジニアのサポート業務に時間を割けるよう、あらかじめ調整しておく。
もちろん上記だけでは不十分ですし、雇用後に新たな気付きを得ることも、多々あるでしょう。その都度、柔軟な対応を心がけていくことが、大切になってきそうです。
生活面での受け入れ環境づくり
慣れない環境で労働に励む外国人は、疲労やストレスを蓄積させがちです。仕事に向け、彼らのモチベーションを高めてもらうためには、プライベートな時間を過ごす住居にも配慮する必要があります。
「今回の就労のため、外国から招聘した」という場合には、企業が住居を手配することが多くなっています。民営のアパートを選ぶ場合は、静かな環境でゆっくりと休養できる物件を選ぶこと。社員寮があるという場合でも、あらかじめ入寮者やスタッフに特別な配慮を求めておきます。外国入居が制限されている場合もあるので外国人の入居に強い不動産を選ぶことや、日本で働く外国人が多く住むシェアハウスなどの選択肢も考えてみても良いでしょう。
また採用決定後に、本人と『生活面について話し合う機会』を積極的に設けたいもの。趣味や「日本でやってみたいこと」、そして好みの食事や宗教、スポーツ習慣などについて情報を収集しておけば、来日後の居住エリアで実現可能な方法を、大まかに提示してあげることができます。
また住居以外にも、外国人が実際に生活をスタートさせた際、インフラ契約や法制上手続きなどさまざまな場面で、日本人が気付きにくい不便に直面することがあります。彼らが所属する部署を統括しているリーダーは、業務面だけでなく、生活面の不便について、気楽に相談しやすい雰囲気づくりを心がけていく必要があります。
労働条件面での受け入れ環境づくり
外国人を雇用する際は「日本人スタッフと同等の待遇を与える」ことが、在留資格交付の条件となっています。これは給与だけでなく、労働の内容や環境にもあてはまる条件。「外国人だから」という差別は、事前に撤廃しておかなくてはなりません。
また『日本人ならではの就労意識』の中に、外国人には馴染みにくい要素があります。「同じ部署の人がまだ働いているので、帰りにくい」といったサービス残業や、「先輩を差し置いて、有休を取るのは気が引ける」といった精神風土は、その最たる例。外国人が拒否反応を示すことはよくあります。外国人には理解が難しい文化です。
外国人の雇用は、企業のグローバル化に向けた大きな前進。この機会に、旧態依然とした就労意識からの脱却を目指すことは、日本人スタッフの士気を高めるのにも、役立ちます。企業内の上層部も積極的に話し合いを行い、社内の働き方改革に着手してください。
またここまでの内容とは相反しますが、外国人に迎合してばかりなのも、問題です。
「上司を敬う」、「時間や期限を守る」、「自分だけでなく、チームの成果を意識する」といった基本ルールに馴染もうとしない人材には、意識改革を促す強い態度も必要。就業前には労働条件とともに、最低限必要と思われる社内ルールを伝え、理解と実践を求めましょう。
価値観共有・帰属意識醸成に関する取組み準備
外国人エンジニアの採用は「異なる文化や価値観を持つ人間を、受け入れる」ことに繋がっていきます。
例えば宗教を例に挙げてみましょう。日本では仕事中に顔を出すほど篤い信仰を持つ人はまれですが、海外には「神への祈りを毎日欠かさない」という習慣を持つ人が、数多く存在しています。
そうした自分たちとは違う文化や習慣をもっているひとも働きやすいような環境を整えること、理解することが大切です。既存社員には仕事上だけでなく、個人の多様性を受け入れる柔軟さを養っていくよう、指導してください。
また外国人スタッフが1日も早く社内環境に溶け込み、良好なコミュニケーションが図れるよう、サポートしてあげることも大切です。
スタッフ同士でざっくばらんな会話ができる機会は、特に貴重。終業後の飲み会などは、強制にストレスを感じる人もいますので、チームリーダーがランチタイムなどへ積極的に誘い、異文化交流を図るなども有効な手です。またレクリエーションなどの機会を、参加者の負担にならない程度に企画するのもよいでしょう。
まとめ
「すでに外国人スタッフが在籍している」という企業の場合は、前例があるため、対処もスムーズ。外国人スタッフ同士で積極的に交流を図ってもらえば、働きやすい環境がより実現しやすくなります。
「ウチは外国人を雇うのは、初めて」という場合、煩雑な作業は多くなりがちですが、誰よりも大きな不安を抱えているのは、来日前の外国人です。彼らの立場を慮り、必要な準備を進めていく共感力の高さが、今回の雇用を成果に繋げるカギとなるでしょう。
外国人の雇用は、企業のグローバル化に向けた大きな前進。この機会に、旧態依然とした就労意識からの脱却を目指すことは、日本人スタッフの士気を高めるのにも、役立ちます。企業内の上層部も積極的に話し合いを行い、社内の働き方改革に着手してください