外国人採用の不安「採用単価の目安はどのくらい?」
外国人エンジニアを採用する際は「日本人社員と同等の待遇で扱う」ことが原則となっています。このため、国内のエンジニア職種の給料相場について改めて見直し、知識を深めておくことが必要です。
外国人エンジニアの採用単価目安
外国人エンジニアを採用した後には給与を支払っていくことになりますが、実は、採用する前の段階でも“採用コスト”は発生します。どのようなコストなのか、以下に見ていきましょう。
- 人材派遣会社…採用は決まるまで費用は発生しませんが、正式な決定後に派遣料(該当者の年収の約35%)を支払う必要があります。
- 求人サイト…求人広告掲載料は50~150万円程度。複数人の採用に繋がったとしても、それ以上の料金はかかりません。しかし外国人からの応募が少ないサイトを利用し、採用に繋がらなかった場合、費用が無駄になってしまうので、注意が必要です。
- 直採用イベント…人材派遣会社からの紹介や応募を待つのではなく、企業が直接大学へ訪問し、会社説明会・面接・内定出しを行います。イベントへの参加費用と採用決定後の成果報酬型を合わせた料金モデルが一般的です。
採用者の決定後、在留資格認定証明書交付申請に関する手続きが発生します。これらの作業を社内で行える場合、手数料はかかりませんが、法律事務所などに依頼する場合は、ひとりにつき10万円程度が必要です。
そのほか交付後に書類を本人へ送付する郵送料、現地でのビザ申請料が生じます。大使館でのビザ申請は日本円で3,000円程度。ただし国によってはその「3,000円」が大金である場合もあるので、日本企業側が支払いを受け持つ方が良策です。
ソフト系エンジニア職種の給料相場は?
エンジニア職には、大別してソフト系とハード系の2種類があります。それぞれの給料相場は異なりますので、きちんと把握しておく必要があります。すでに所属している外国人社員が今の自社の給与に満足していてくれたとしても、その金額が相場より低ければ、新たな人材からの応募は集まりにくくなります。
国内の30代前半のソフト系エンジニアの平均年収
- プロジェクトマネジャー…733 万円
- コンサルタント、アナリスト、プリセールス…652 万円
- 研究・テクニカルマーケティング・品質管理ほか…579 万円
- 基盤・インフラ…575 万円
- ネットワーク設計・構築(LAN・Web系)…547 万円
- 通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)…543 万円
- パッケージソフト・ミドルウェア開発…512 万円
- システム開発(Web・オープン系)…512 万円
- 社内SE…510 万円
- システム開発(汎用機系)…508 万円
- システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系)…490 万円
- 運用、監視、テクニカルサポート、保守…477 万円
参考サイト:https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=002284
上記のデータを集計し、ソフト系エンジニア全体の平均年収を算出すると、550万円前後ということになります。月収では約46万円となりますが、賞与などを計算に入れる必要もありそうです。
ハード系エンジニア職種の給料相場は?
それではハード系のエンジニアの平均年収は、どのようになっているのでしょうか?以下に見ていきましょう。
国内の30代前半のハード系エンジニアの平均年収
- 半導体設計…569 万円
- 研究、特許、テクニカルマーケティング…563 万円
- セールスエンジニア、FAE…544 万円
- 光学技術…541 万円
- 製造技術…525 万円
- 生産技術、プロセス開発…521 万円
- 回路・システム設計…519 万円
- 制御設計…518 万円
- 機械・機構設計…511 万円
- 素材、半導体素材、化成品関連…505 万円
- 品質管理、製品評価、品質保証、生産管理…501 万円
- サービスエンジニア・FAE…494 万円
- 運用、監視、テクニカルサポート、保守 …350 万円
参考サイト:https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=002284
上記のデータを集計し、ハード系エンジニア全体の平均年収を算出すると、500万円前後ということになります。エンジニアの年収は、ハード系よりもソフト系の方が若干高いという相場になっていることがわかりますね。
業種別にみると、高年収なのは金融・保険系。これはソフト系、ハード系のいずれにも当てはまる特徴です。
ITエンジニアの需要アップに伴い、採用・給与相場も年々上昇
近年、IT・通信業界の給与相場は上昇しており、総合商社やメーカーなどの給与を上回る勢いを持っています。
特にIT業界には「エンジニアの扱う技術が、日進月歩の進化を遂げている」という特徴があります。現在はAIやVR、そしてブロックチェーンなどを活用したサービス開発に力を入れている企業が増加中。そのスムーズな進展のためには、フレッシュな教育を受けた若い人材に、大活躍してもらわなくてはなりません。
ところが近年の日本には、少子高齢化の影響がじわじわと現れ始めており「若年層の労働者数に不足が目立つ」という、大きな不安材料が顕在化しています。企業にとって優秀な人材の確保は、解決の難しい課題となりつつあるのです。
そこで注目したいのが、外国人エンジニアの存在です。世界基準を目指す厳しい環境の中で豊富な経験を積んできた人材は、即戦力として貴重な働きを見せてくれる存在です。
彼らは日本人と比べ、転職に対する抵抗が少ないこともあり、待遇に対する評価も厳しめです。優秀な人材を確保するために、企業も給与水準を高めていかなくてはならない場合もあります。
外国人エンジニアとの給与交渉で意識するポイントは?
外国人エンジニアからの応募を検討する中で「ぜひ採用したい」と考える人材が居たら、給与について具体的な交渉を進めることになります。
彼らには「自分の意見をはっきりと述べる」傾向があり、「転職を当たり前と考えている」という場合も少なくありません。このため、曖昧な口約束は通用しません。またより良い条件の獲得に向け、高い水準の給与を希望するケースも多いので、うまく交渉をする必要があります。以下の点を理解しておきましょう。
- 外国人は事前に給与の相場を調べています。あまりにも低すぎる場合、応募すら検討しません。
- 日本語や英語(母国語が英語でない場合)の能力は、給与に反映させなくてはなりません。また日本語学校への通学機会を与えてくれる企業は外国人人材から注目されます。
- 給与面で競争力が低いと判断される場合は「外国人ならではの活躍の場を用意できる」ことを強調し、実際の採用後の業務と、隔たりがないように努めましょう。また、外国人にとって働きやすい環境(特に休暇制度)を用意できれば、妥協点が見出しやすくなります。
- 外国人採用の前例がある場合は、昇給例などを具体的に提示しましょう。
- 都市部(東京、大阪など)と地方部では給与に差があることを理解してもらいましょう。
話し合いの際に、上記の内容を理解し、必要な資料を準備できていれば、外国人も誠意を感じ、入社を前向きに検討してくれるかもしれません。
外国人採用の不安「採用単価の目安はどのくらい?」 まとめ
経済成長率や生産年齢人口などにおいてかつての勢いを失いつつある日本で、企業はこれまでの国内の日本人人材のみを頼りとしていた雇用状況から抜け出し、外国人の労働力に、積極的に頼らなくてはならない状況です。
しかし海外にはエンジニアに対し、日本より好待遇を提示する国も数多いため「外国人だから、このくらいで良いだろう」という態度は通用しません。
主張の強い外国人に押されることがないように留意しつつ、日本人と同様にスキル・経験を慎重に見極めたうえで、最適な価格設定を行っていく必要があります。
今後は日本人と外国人の双方が納得し、気持ちよく労働できる環境の整備を目指すべきです。試行錯誤が外国人エンジニアの定着を助け、健全な利益の発生に繋がると理解しておきましょう。