ウクライナ人エンジニアの採用ガイド

近年の世界情勢のなかで、決して歓迎されるべきではない困難ゆえに、日本でもその国柄や文化を知られるようになったウクライナ。実は『Paypal』や『What’sapp』を創業した、天才IT技術者を輩出するなど、非常に優秀なエンジニア実績を持つIT先進国でもあります。

【地理・文化・政治・宗教観】ウクライナってどんな国?

東ヨーロッパにあるウクライナは、ハンガリーやロシアに隣接した国。決して大きな国とは言えず、人口も4,200万人程度です。

近代に入ってからロシアから干渉を受けることが多く、20世紀に入って「ソビエト連邦」の一構成国として取り込まれた後も、たびたび『ロシア化』推進目的の圧力を受けます。第二次世界大戦前には、ロシア側の無謀な政策による人為的な飢饉で、大量の人命が奪われました。

1986年には数多くの犠牲者を生んだ『チェルノブイリ原発事故』が発生し、世界中から注目を集めます。その後1991年にソビエト連邦から離脱し、民主主義国としての独立を果たしています。
さらに、2022年2月24日からの“侵攻”で、今まさに困難のさなかにあることは、ご存じの通りです。

このように波乱の歴史の中にあるウクライナ、侵攻の影響も含めて現在の経済状況は決して良いとはいえません。
GDP成長率がマイナス29.1%と大幅に落ち込んだ2022年から、2023年には早々に「プラス4.9%」へ転じるなど急速に復興(※)しつつはありますが、ロシアとの間の問題の出口が見えていないのが現状です。

※情報出典:ウクライナ中央銀行(NBU)2023年11月時点見通し

また、ウクライナ人の中で最も信仰されている宗教はキリスト教ですが、国民全体の半数以上は、特定の宗教を信仰していないそうです。

【国民性】ウクライナ人エンジニアの特徴は?

「東欧のシリコンバレー」と呼ばれるほど、ウクライナはIT分野で高く評価されている国です。

優れたIT人材の豊富さがその理由のひとつです。数学や理工学における大学教育が強固で、それらの高度な教育を受けたIT分野の卒業生が毎年2万人以上輩出されています(2020年時点統計)。その数は、中東欧諸国で同じようにIT教育に力を入れているポーランドやルーマニア、ベラルーシなどの上位国を抜いて、圧倒的最多数を誇っています。

彼らはソフトウェア開発やITインフラストラクチャの構築において非常に優れた成果を上げて、なかでもアウトソーシングやソフトウェア開発の分野で高く評価されています。世界的なテクノロジー企業やスタートアップ企業でも多数活躍し、自国とは異なる企業文化やビジネス環境での対応能力が高いことでも知られています。

ウクライナの公用語は『ウクライナ語』ですが、エンジニアのほとんどは英語が堪能で、またロシア語もネイティヴ並みに話すことができます。ロシア語圏でも英語圏でもコミュニケーションが可能なIT人材は、世界中で重宝される存在となっています。

ただ、2022年から始まった“ロシア侵攻”の影響で、少なからぬ人材が流出し、首都キーフ(キエフ)周辺に多く存在していたIT企業や、学生にITプログラムを展開する高等教育機関などもその機能を縮小、あるいは撤退する事態ともなっており、産業として衰退へ向かう懸念も生じているのが現状です。

【新卒・転職】ウクライナ人エンジニアの就活・採用事情

ウクライナ国内でのエンジニア雇用形態は、他国と大きく異なります。企業に社員として所属していても、『個人事業主』として契約するのが一般的で、基本給以外はすべて『営業利益』として計上されます。その課税率は5%で、国内の他の職種はもちろん、欧米諸国と比べても優遇されています。このためウクライナのエンジニアは、より多くのお金を手元に残すことができるのです。

現在のウクライナはそれほど豊かな国とは言いづらく、GDPも高くはないのですが、エンジニアの給与は他の職種の倍以上だといわれています。彼らがこれほど大事にされているのは、国が『ITに活路を見出したい』、そして「優秀な人材を国外に流出させたくない」と考えているからでしょう。

こうした背景を受け、ウクライナでは毎年、数万人の理工系大卒者がエンジニアとなります。ウクライナに可能性を見出している先進国は数多く、各国のオフショア拠点が次々と誕生している様子。また、待遇面の条件に魅力を感じ、民間のスクールで教育を受けながら、エンジニアへの転身を目指す人も増加しているようです。

【仕事観】ウクライナ人エンジニアが就職先を選ぶ際に重視するポイント

先述の通り、ウクライナではエンジニアが非常に優遇されています。そのような環境がありつつも、自国を飛び出してわざわざ海外で仕事をしようとする人は「海外で自分の力を試してみたい」などの動機を持っていることが多いようです。

もちろん、昨今のロシア侵攻の影響を避けるために、国外で仕事の機会を得たいと考える人材も少なくないはずですが、自身の仕事の上での関心・信条から、「自分自身が興味を持てるプロジェクトに関与できる」、「これまでにない機会を与えられる」など、新たな可能性の発見を促す業務内容を提示する企業があれば、積極的に応募を検討してくれるかもしれません。

また、「ウクライナの中で、エンジニアは高収入」であることは前項で説明しましたが、その月収は日本円で20万円~30万円程度。世界的に見れば、それほど高水準とは言えません。このため「国内にいるよりも、稼げそうだ」と判断できる待遇であれば、彼らの興味を惹くことができそうです。
さらに、ウクライナも含め欧州では一般に、日本の製品や技術に対する評価が高いことも日本企業にとっては有利に働く要因の一つです。

なおウクライナでは、外国人をクライアントに持つフリーランスのエンジニアが、数多く存在しています。そうした境遇で仕事をする人材は、得てして「残業が多い」、「長期休暇が思うように取れない」などで拘束されることを好まない傾向があります。

【どうやって出会う?】ウクライナ人エンジニアを採用する方法は?

外国人エンジニアの中でも、特にウクライナ人を採用したいという場合、どうすべきなのでしょうか?以下に見ていきましょう。

1.現地採用

2021年時点で法務省が発表した統計によれば、日本で在留資格を得ているウクライナ人の数は、2,000人程度(2022年末時点で避難民として入国している人を含めると現在4000人程度)。このため、エンジニアとしての可能性をウクライナ人に求めるのであれば、現地採用を検討するのが早道かもしれません。

多くの外国企業が、ウクライナの首都キーウ(旧表記:キエフ)にオフショアの拠点を設けているようですが、日本企業の進出はまだまだ少数だったうえに、ロシア侵攻の影響で拠点の縮小をせざるをえないことにもなっています。

すべてはこれらの問題が解決して、情勢が落ち着いた後の話にはなりますが、パイオニアを目指して進出をすることは、日本企業にとって大きな可能性が秘められているかと思います。

2.教育機関との提携

ウクライナの留学生を受け入れている教育機関と提携を結び、修了後の人材をインターンとして受け入れるという方法も考えられます。

エンジニアとしての実務経験はまだなくても、高い教育水準の中で、エンジニアとしての資質を磨き続けてきた人材が見つかる可能性は十分にあります。

ウクライナは、現在の逆境にありながらも、今後、IT大国としてさらに発展していくに違いないと考えてよいと思います。驚異的なスピードで復興を遂げる可能性が大です。もし同国の人材を確保できれば、中東欧方面へビジネスを拡大する際の強力なパイプとして活躍してくれることもあり得るでしょう。

【注意点】ウクライナ人エンジニアを採用する際に意識すること

現在のところ、日本とウクライナの間には、エンジニア職に限ることなく、“避難する人の受け入れ”的な意味合いで、日本での就労機会の提供に視点が集まりがちです。そうした状況の中で、日本で不足するエンジニアに代わる人材を獲得することを考えるのは、大きなオポチュニティであり、同時にチャレンジングなことでもあると言えます。

すでに国内に多くの人材がエンジニアとして就労している中国人、アメリカ人、韓国人などを採用するケースと比べて、根本的に意識すべきことが異なってくると理解しておいてよいでしょう。

「なぜ、今、ウクライナに注目するのか」、そして「なぜウクライナ人エンジニアを雇うのか」という理由をスタッフ全員が共有し、意識を統一しておく必要があります。

「現在のウクライナのIT事情はどうなっているのか」、そして「エンジニアはどのように活躍しているのか」といった知識を充分深めておくことも大事です。

日本とウクライナの距離が図らずも近くなってきている昨今、すでに来日しているウクライナの人や、日本への受け入れを積極的に行っている事業体などへコンタクトをとることでも貴重な情報が得られます。そうした方法で交流を図り、関係を深めてみるのも一つの方法かもしれません。

ウクライナ人エンジニアの採用まとめ

ウクライナは間違いなく東欧でもトップクラスのIT立国で、豊かなIT人材を輩出し続けてきた国です。

世界史上でもまれにみる動乱に巻き込まれて、今は決して幸福な状態にはありませんが、この国で培われている技術的リソースは、将来に渡って、世界に貴重な価値をもたらすものと考えられます。その技術力を、エンジニア不足に悩む日本のIT業界で発揮してもらえるとしたら、それは大変に心強く感じられることだと思います。

ウクライナのエンジニアたちが今、置かれている状況を十分に理解した上で、彼らのスキルを日本の産業に貸してもらえることを考えるのは意義深いことであるはずです。

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